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谷川俊太郎 空に小鳥がいなくなった日

「天人一如」という、
東洋の哲学(自然観)があります。
ヒトは自然(天)の一部、
ヒトは自然と一体、
ヒト即ち自然という考え方です。

    空に小鳥がいなくなった日

                 谷川俊太郎

森にけものがいなくなった日
森はひっそり息をこらした
森にけものがいなくなった日
ヒトは道路をつくりつづけた

海に魚がいなくなった日
海はうつろにうねりうめいた
海に魚がいなくなった日
ヒトは港をつくりつづけた

街に子どもがいなくなった日
街はなおさらにぎやかだった
街に子どもがいなくなった日
ヒトは公園をつくりつづけた

ヒトに自分がいなくなった日
ヒトはたがいにとても似ていた
ヒトに自分がいなくなった日
ヒトは未来を信じつづけた

空に小鳥がいなくなった日
空は静かに涙ながした
空に小鳥がいなくなった日
ヒトは知らずに歌いつづけた

 谷川俊太郎『地球へのピクニック』
          教育出版センター

【 仮定する、仮説を立てて考える 】

今ある状況に対して
「もしも~だったら」
と考える方法を「仮定」と言い、
そうした考え方を
「仮定して考える」
「仮説を立てて考える」と言います。

現実の置かれた条件や
意味を考えるときにたいへん役に立ちます。
現実の状況をしっかり捉えられるようになると、
方向性を導き出すこととか、
過去や未来のこと、
フィクションの世界の様子を想像する力がついてきます。
抽象的思考をする、
高学年になる頃までに
学ばせておきたい考え方だと思います。

この詩の特徴を見てみましょう。
各連の奇数行を注意して読んでください。
 〈○○に△△がいなくなった日〉
の繰り返しになっています。
「もしも~であったら」
「もし~ならば」
「~なのに」という
仮定の問いになっています。

仮定され
仮説として書かれた内容は、
本来は起こるはずのないことと誰もが思うことです。
そんなこと・・・と、
すぐに否定したくなるようなことがらです。
しかし、
たとえありそうになくても、
そのように仮定して考えると、
「もしも、本当にそうなったら・・・」と考えてみると、
「このままで、いいのだろうか」と、
現実への視線がとてもシビアになってきます。
この問いかけによって、
心の中に不安感が呼び覚まされます。

対して偶数行は、
〈森は~〉
〈海は~〉
〈街は~〉
〈ヒトは~〉
〈空は~〉と、
話者の想像世界を示すかのように
「~~ではないか」
という答えを差し出します。

前の行から考えて、
「~なので」
「~のために」とつながるのでしょうか・・・。
それとも、
「~なのに」
「~にもかかわらず」とつながるのでしょうか・・・。
いずれにしても、
四行目に必ず〈ヒト〉が登場しますから、
おそらく
〈ヒト〉の営みによる影響を受けて、
〈森〉から〈けもの〉を、
〈海〉から〈魚〉を、
〈公園〉から〈子ども〉を、
終いには
〈ヒト〉から〈自分〉までも、
奪うことを予見し、シニカルに批評します。

終連の
〈空は静かに涙をながした〉という、
人物のような〈空〉の姿、
〈ヒトは知らずに歌いつづけた〉と、
カタカナで書かれる〈ヒト〉の姿、
対置的ですから、強く印象的に残ります。

〈空に小鳥がいなくなった日〉だから、
そうなのか、
〈空に小鳥がいなくなった日〉なのに、
そうなのか、
「問わずにおれなくなる」
心理状態に追い込まれそうです。

この詩が発表されてから、数十年・・・
現実は、
まるでこの詩の仮説を検証するかのように、推移しています。
自然がダメージを受けるとき、
ヒトも同じようにダメージを受けているのです。

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テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

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三好達治 土

一瞬のうちに映像を切り替える、
私たちが持っているすばらしい能力です。
 「ことば」が創るイメージの世界に、
詩人たちは挑戦を続けます。

   土
          三好 達治

蟻が
蝶の羽をひいて行く
ああ
ヨットのようだ
        
 三好達治『少年少女のための日本名詩選集12』あすなろ書房

【 比喩のおもしろさ 】

「アリって働き者だなあ」
そういう感想を持って眺める子もいるでしょうし、
「どこへ連れて行かれるんだろう、怖いなあ」
こんな思いで眺める子もいることでしょう。

(蟻)がおそらくは死んでいるか、
抵抗できないほど弱っているかの、
〈蝶〉を巣に運んでいく作業。
〈蝶の羽をひいて行く〉様子。
現実の、日常の、ありふれたできごと。
だれもが一度は見たことのある光景を描いた詩です。

この詩で、話者はその様子を

ああ
ヨットのようだ

と表現します。
ちょうど、
片方の羽が立ったような状態のままで運ばれていたのでしょう。
するすると地面をすべるように動いていく様子、
それがまるで海面や湖面をすべるヨットのように見えた、

ああ
ヨットのようだ

うまく捉えた比喩表現です。

もちろん、
この詩の魅力はここに留まるものではありません。
詩の世界・文芸の世界では、
比喩表現によって、
しばしばおもしろい現象が引き起こされます。

ひとつには、
「喩えるものと喩えられるものの関係が逆転する」
 (冬の章 黒田三郎『紙風船』のページを参照してください。)

ふたつには、
「喩えに使ったものが、別な他のもののイメージまで引きずってくる」
 (みんながよく知っている
  レオ・レオニ作『スイミー』では、
  ちいさな魚のきょうだいたちの暮らす海に、
  おおきなマグロが
  ミサイルみたいなはやさでつっこんできた。
 という比喩があります。
 本来はスピード感を表すための比喩ですが、
 ミサイルの持つ、
 爆破=生活の破壊・多くの死というイメージを
 同時にひきずって来て、
 二倍三倍の怖さを感じさせます。)

みっつめには、
この詩がそうなのですが、
「喩えに使うものが、
 場面全体のイメージまで一気に変えてしまう」
ということがあります。

この詩で
〈蟻が
 蝶の羽をひいて行く〉
その様子を
〈ああ
 ヨットのようだ〉
と言っています。
この比喩によって、
本来は「土」と題された、
土の上で繰り広げられていた場面=世界が、
一瞬のうちに、
がらりと海や湖などの場面=世界に変わっていくのです。
〈ヨットのようだ〉
と喩えたために、
眼前での、卑近な、
ミニマムな世界が、
広大な視野が広がる、
マキシマムな世界に変貌を遂げていくのです。
現実では
蟻が死んだ蝶を運んでいるのにすぎないのだけど、
その現実をはるかに超えて、
青い大海原を
静かにすべるように進むヨットが目に浮かぶ。
死んでいるはずの蝶なのに、
生命の躍動感・たくましささえ感じます。

おそらく、
スーパーコンピュータでも計算できないような、
イメージの豊かさ
発想の柔軟さ
切り替えの速さ
を持つわたしたちの脳。

ことばの持つ力のすばらしさを思わずにはいられません。
ちなみに、
比喩表現ではありませんが次の詩も読んでみてください。
感動をもって読める詩ではないかと思います。

クサッパラ    
     イケダ ショウゾウ (小学1年)

アア、
クサガヌッカ。
ニェガスット。

(注) ヌッカ あたたかい
    ニェ  におい
    スット するよ

この詩は、戦後まもないころに、
鹿児島で生まれた有名な児童詩です。
戦争はおわりました、恐怖は去りました。
しかし、
人々の生活はきびしく、
子どもは一家の貴重な働き手でした。
ショウゾウさんはきっと、
牛や馬など家畜の世話をしていたのでしょう。
草や稲わらで家畜を育てる、
敷きわらに吸い込まれたふん尿が肥しになる、
その肥しが畑や田んぼにすきこまれる、
豊かな土壌から野菜や米がとれる、
野菜やお米が育つ間に、
畑や畔の草を刈りとり、
稲わらが家畜の餌になり、
育った家畜は市場で売れて一家の糧になり、
子どもの本やノート代になる、
当時の鹿児島は、
こういう小規模な貧しい農家がほとんどだったのです。
こうした生活背景から、
この詩は生まれました。

小学一年生のショウゾウさんは、
今日もその小さな手で鎌を持ち、
刈りとって運んできた草を、
家畜に声をかけながら食べさせ、
ふんと尿にまみれた重たい敷きわらを運びだし、
新しい稲わらを敷いてやったことでしょう。
それでも子どもは子ども、
遊びたい盛りです。
青い草原に体をなげだし、
積み上げた草にもぐったことでしょう。
そのとき、
ふと感じたクサのぬくもり――
ふくいくとしたクサのにおい――

たった三行の、
子どものつぶやきです。
しかし、
はかり知れないほどの奥行き・広がり・深さを感じます。
ショウゾウさんも、すごいと思いますし、
この三行を「詩」ととらえた、
ショウゾウさんの先生も、すごいなあと思います。

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まど・みちお てんぷらぴりぴり

ちいさい頃の思いでは
いくつになっても残っているものです。
ささやかであっても、
季節に応じた家族の行事がくり返されている。
子どもの育ちにとって、
このうえない贈り物になるかも知れません。

    てんぷらぴりぴり

              まど・みちお

ほら おかあさんが ことしも また
てんぷら ぴりぴり あげだした

みんなが まってた シソの実の
てんぷら ぴりぴり あげだした

ツクツクホウシが けさ ないたら 
もう すぐ ぴりぴり あげだした

子どもの ときに おばあさんから
ならった とおりに あげだした

秋の においの シソの実の
小さな かわいい つぶつぶの
てんぷら ぴりぴり あげだした

 まど・みちお『てんぷらぴりぴり』大日本図書

【 記憶の メカニズム 】

紫蘇の実のさわやかな香りがしてくる詩です。
季節は、夏の終わり、初秋のころでしょう。
〈ぴりぴり〉 天ぷらなべの油の音ですね。
もう待ちきれない、ほら、ほら、もうすぐだよ。

毎年くりかえされる季節の行事だから
忘れられない「家族の記憶」とも呼べそうです。

・・・・・・でもまあ、
とにかく思い出せない!
ぜったいに、
忘れないはずだったのに・・・・・!
あの映画の、
ほら、あの、俳優さん?
あれ、わたしは、ここへ何をしに来たんだっけか?
たしか、何かを忘れているんだけどなあ?
何を忘れているのかも、忘れてしまった。

ああ、
ここんとこまで出かかってるのに・・・!
あれよ、あれだってばあっ!
こういう毎日です。
そして極めつけなのが、
思い出せない、そのことを・・・・・、
だれかに先に思い出されたときのくやしさ!

「記憶のメカニズム」というものがあるようです。
たとえば、この詩のように、
味とか、色とか、音とか、においとか、触感とか、
五感にうったえるものが大事な「鍵」なんだそうです。
ハーブやアロマテラピー、カラーテラピー。
色彩や光や素敵な香りで、パッと思い出す!
即効の「記憶回復剤」があればいいのですが・・・

先日、S児(小学2年生)の誕生日でした。
「広汎性発達障がい」の子で、特別支援学級に通っています。
その天真爛漫な表情と天衣無縫な行動で、
(もう、めちゃくちゃなんですが、かわいくてしょうがありません。)
学校中の人気者です。
さて、このS児くん、
「S、お誕生日おめでとう」と言ったママに、突然、
「ぷうっ」
とお返事がわりにやったとか・・・。
ママさん、この日を生涯忘れることはないでしょうね。
記憶のメカニズム?
即効性?
いえ、S児はきっと忘れていると思います。

素敵な香りは、アロマテラピー。
「ぷうっ、ぷうっ、ぷううっ。」
S児の香りは、あろまてらぷー。

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

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かごしまふるさとカルタ ゴッタン

かごしまふるさとカルタ(南方新社)
        林 竜一郎

     こ

念仏唄
祭文語り
ゴッタンの音

ごったん2
(クリックで拡大)

【 流行の最先端を楽しむ 】

ゴッタンは、
三味線の胴に
革でなく杉や檜の板を張った楽器です。
照葉樹林文化で日本と関係の深い
中国雲南省の三弦楽器「古弾」(グータン)があるそうで、
もしかするとこちらが三味線のルーツかもしれません。
音色は、
三線や三味線とひと味違う、独特な響きです。 

娯楽の少なかった時代、
ゴッタンに合わせておおいに歌舞を楽しんだことでしょう。
禁制だった念仏も
「念仏唄」にすれば、役人の目をごまかせました。
藩外諸国の風物やニュースを
おもしろおかしく詠み込む、
流行の最先端「祭文語り」
(さいもんがたり、後に浪花節・浪曲などに発展)
を真似る人気者もいたでしょう。
いつの世も、
人々は知恵を絞り楽しい時間を作って暮らしたのです。

ゴッタン奏者で有名な、故荒武タミさん。
芯の強さ明るさが唄や語りからも伝わります。
その意思を継いで、
各地の同好会が熱心に活動を続けています。
趣のあるゴッタンの音がいつまでも響くことを願っています。

ごったん1
(新築の家に贈られたゴッタン) 

※ 「かごしまふるさとカルタ」は、
   アマゾンやセブンイレブンなど
   ネットで購入できます。
   また、南方新社に直接申し込めば、
   送料無料です。

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かごしまふるさとカルタ 下駄ん歯

かごしまふるさとカルタ(南方新社)
             林 竜一郎

   け

黒糖の
風味豊かに
下駄ん歯かじる

【 故郷のトリビアがすごい 】
「げたんは」は、
昔から鹿児島に伝わる伝統の菓子です。
その名の通り、下駄の歯の形をしています。
小麦粉を練って焼いた生地を台形に切り、
黒砂糖を溶かした蜜に付け込んで作ります。
しっとりとした食感の甘いおやつ、
お茶請けにぴったりです。
きっと、茶飲ん話に花が咲くことでしょうね。

さて、
これから鹿児島の「トリビア」を
いくつか紹介します。
「鹿児島の人たちは」
「鹿児島では」
を頭に付けて、読んでください。

・「白熊」を食べているらしい。
  家族でとっても「むじゃき」に。
・「来るから」と言うと、
  「行く」ことになるらしい。
・子どもでも、
  おもちゃやランドセルをちゃんと「直す」らしい。
・「そうめん流し」なのに
  回しているらしい。
  で、「そうめん回し器」が一家に一台必ずあるらしい。
・「茶わん蒸し」は、
  どうやら虫の料理だと思っているらしい。
・歯が強く
  下駄の歯を齧るらしい。
・街で「おっさん」と呼ぶと、
  奥さま方が二・三人振り返るらしい。

げたんは1-1
銘菓「下駄ん歯」

 ※ 「かごしまふるさとカルタ」は、
   アマゾンやセブンイレブンなど
   ネットで注文できます。
   また、南方新社に直接申し込めば、
   送料無料で送られます。

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